私家版:メタプレイスの概要

記事が多くなってきたので、「メタプレイス」についての説明を簡単にまとめてみました。

この記事の内容は筆者が個人的にまとめた非公式のものです。内容の不備等についてはご容赦ください。

最終更新:2008年3月30日

メタプレイスとはなにか?

メタプレイスは「仮想世界のプラットフォーム」です。メタプレイスでは仮想世界という言葉を広い意味で捉えており、MMORPGやチャット・ワールドなどの仮想空間上に大勢のアバターが集うものから、シューティングやパズルゲームなどのような一人用ゲームまで、インタラクティブな操作の可能な様々なものをその対象としています。

メタプレイスは「仮想世界のYouTube」でもあります。ユーザが作った仮想世界をポータル・サイトにまとめ、それをみんなでプレイできるようにします。各仮想世界はタグ付けされ、ジャンル、ランキング、評価ポイントなど、様々な方法でランキングされ、検索することができるようになります。

メタプレイスのポータル・サイトで扱う仮想世界は、メタプレイス専用のプラットフォーム上で動作するものだけが対象となります。このプラットフォームの存在が、メタプレイスの可能性の源であり、既存のフラッシュ・ゲームのポータル・サイトなどと違う点です。

このプラットフォームを中心に、メタプレイスとは何かをみていくことにしましょう。

スタイルシートとモジュール

メタプレイスで仮想世界を作る最も簡単な方法は「スタイルシート」を使うことです。

スタイルシートとは「仮想世界の雛形」を意味する言葉です(HTML/CSSのスタイルシートとは別ものなので注意してください)。サーバー上には予め多くのスタイルシートが用意されています。作りたい仮想世界に最も良く似たスタイルシートを選択し、名前をつけるだけですぐにプレイ可能な仮想世界が準備できます。

ただし、この仮想世界はスタイルシートのコピーにすぎず、ここから時間をかけて仮想世界をカスタマイズしていく必要があります。しかし、特別なプログラミングの知識がなくても、すぐに動作可能な仮想世界を準備することができ、実際に動かしながらグラフィックスやサウンド、そして各種ギミックなどを調整していけるというのは仮想世界製作上の大きなアドバンテージとなるでしょう。

また、スタイルシートとは別に「モジュール」という概念もあります。

スタイルシートが仮想世界の雛形であるのに対して、モジュールは仮想世界に必要とされる各種機能をライブラリ化したものです。たとえば、あなたの仮想世界に音声チャットの機能を追加したい場合には、音声チャットのモジュールをインポートすることによって、仮想世界で音声チャットをサポートすることができます。

メタプレイスの開発元では、メタプレイスをブログにたとえ、「ブログのデザインを選ぶようにスタイルシートを選び、ブログ・パーツを配置するようにモジュールを組み込むことによって、プログラミングの知識なしに、すぐに仮想世界を作りはじめることができる」と説明しています。

ユーザは、スタイルシートやモジュールを1から作り、これを一般に公開することもできます。プログラミングができる人はもちろん、音楽データや、各種グラフィックデータなどをモジュール化して公開することもできるようになるでしょう。

これにより、ユーザは自分の得意とする分野で活躍することができ、その成果がマッシュアップされて、様々な仮想世界が産み出されていくことが期待されています。

関連項目: モジュールとスタイルシート / Modules and Stylesheets

サーバー/クライアントモデル

メタプレイスプラットフォームは、多くの MMORPG のようにサーバー/クライアントモデルとして設計されています。このため、メタプレイス・プラットフォーム上で実装された仮想世界をオフラインでプレイすることはできません。

メタプレイスの動作を定義するスクリプトは常にサーバー上で処理され、クライアント側ではキーボードやマウスなどの入力処理と、画面描画や音の再生などの出力処理のみが行われます。

クライアント・アプリケーションの仕様は特定のOS/環境に依存しないように配慮されており、最初に公開されるのはウェブページ上で動作する Flash バージョンとなります。クライアントが Flash で実装されるため、気に入った仮想世界をブログに貼り付けてみんなに紹介することもできるようになるでしょう。

将来的にはスタンドアローンの高機能クライアントも計画されており、これには高度な 3D 描画能力も用意される予定です。

また、クライアント/サーバー間の通信プロトコル仕様が公開される予定になっており、これを元にオープン・ソースのクライアントが実装されることも期待されています。

サーバー/クライアントモデルにより、オフラインでプレイできない、クライアント・リソースをギリギリまで使い込むことができないなどの欠点もありますが、逆にクライアントにあまり高いスペックを要求せず、OSやハードウェアに依存することなく様々な環境でゲームがプレイ可能になるというは、多種多様な仮想世界を産み出す上で大きなメリットとなりうるでしょう。

それに加え、サーバー/クライアントモデルを前提とするため、複数のユーザ間でのインタラクションのある仮想世界が作りやすくなることでしょう。たとえば古典的なパズルゲームであっても、複数人での同時プレイをサポートすることによって、今までにない新しいものが誕生する可能性があると思います。

関連項目: メタプレースはどう動くのか / How Metaplace Works, スクリプティングの理念 / Scripting Philosophy

どんな仮想世界が作れるのか?

メタプレイスは特定のジャンルに特化していないため、「どんな仮想世界でも作れるはず」というのが単純な回答です。実際、アルファテストではパズルゲームから MMORPG まで様々な仮想世界が作られているようです。

ただし、現実には全てにおいて万能なプラットフォームは存在せず、どうしても得手/不得手が出てくると思います。

現時点では、まだ実際にプラットフォームに触ることができず、仕様も部分的にしか公開されていないので、完全な推測になりますが、メタプレースの得手/不得手を考察してみましょう。

おそらく、メタプレイスが得意とする仮想世界

  • RPG (MMORPG含む)
  • パズルゲーム
  • シューティングゲーム
  • アクションゲーム
  • 静止画を中心としたアドベンチャーゲーム
  • 2D チャット
  • 教育用ソフトウェア

まず、MMORPG ですが、これはメタプレイスのメインターゲットのひとつとして、特に強調されているジャンルです。画面はクォータービューで、Ultima Online を発展させたようなゲームになると予想されています。(後述します)。

パズルゲームは、メタプレイスのストレステストにも使用されたので、特に問題はないでしょう。バリエーションを産み出しやすいことから、当初はパズルゲームを中心に様々なゲームが作られていくのではないかと思います。

シューティングもストレステストでも使用されました。この時使われたのは、慣性のある 2D 空間内で20-30人ぐらいのプレイヤーが互いに撃ち合うデスマッチ形式のゲームでした。ネットワークの向こうにあるサーバー上ですべてのスクリプトを処理している都合上、弾幕ゲームのような極端に多くのオブジェクトが別々に動き回るようなものは難しいかもしれませんが、工夫しだいでは面白いものが生まれてくるのではないかと思います。

スーパーマリオブラザースのような2Dのアクションゲームも数多く作られると思います。これもキャラクターを置き換えることによって、多数のバリエーションが生まれていくでしょう。

静止画を中心としたアドベンチャーゲーム。シナリオと静止画をメインとしたものであれば、なんの問題もないと思います。特に日本において、多数のゲームが作られるんじゃないかと考えています。

教材として、インタラクティブなコンテンツの有効性やネットを利用したグループ学習の効果については様々な研究が行われています。一方で教育上有効で、なおかつ魅力的なコンテンツを作るためには多くのコストが必要とされてきました。メタプレイスによって、より少ないコストでより魅力的なコンテンツを作れるようになるのではないかと期待する人もいます。

おそらく、メタプレイスが苦手とする仮想世界

  • 対戦格闘ゲーム
  • FPS
  • レースゲーム
  • フライトシミュレータ
  • 3D 仮想空間

1/60秒のタイミングを競うような 3D 対戦格闘ゲームは難しい気がします。2D キャラクタを用いた、ある程度ゆるいゲームバランスであればうまくいくかもしれません。メタプレイスにマッチした対戦ゲーム用スタイルシートが開発できるかどうかにかかっているでしょう。

FPS は、まず 3D サポートが行われるまでは無理です。3Dサポート対応後も、最新の FPS に匹敵する高度なグラフィックは実現できないと思います。一方で、Quake2 などのオープンソース化されたグラフィックエンジンを組み込んだ専用クライアントを作る人が出てくる可能性はあると思います。

レースゲームやフライトシミュレータも、FPS と同じ理由でしばらく難しいと思います。ただし、うまくデフォルメしてやれば面白いものができる可能性はあるでしょう。

また、セカンドライフに代表される「3D 仮想空間」も、しばらくは難しいと思います。ただ、このジャンルは競争が過熱しているので、メタプレイスでこれを実現しようという需要も少ない気はします。

全体として、クライアントの要求スペックが高いものは難しいのではないかと私は予想していますが、一方でその手のジャンルは高度な技術力を持ったゲーム会社が作ったパッケージが存在しているので、メタプレイスでそれを遊びたいという需要は少ないかもしれません。

メタプレイスでは、むしろ今まであまり試されてなかったニッチなジャンルや、複数のジャンルを跨いだ実験的な要素の強いもので、何か面白いものが出てくるのではないかと期待しています。

関連項目: イベントシステム / Event System, アートの創造 / Art Creation

仮想通貨のサポート

詳細な点についてはまだ決まってないことも多いのですが、メタプレイスは「メタバックス」という仮想通貨をサポートする予定です。

メタバックスは RMT可能な仮想通貨で、メタプレイス上の様々な状況で利用することができます。

これがどのように利用されるかを説明する前に、まずメタプレイスのビジネスモデルについて説明しましょう。

メタプレイスは、一般のユーザに対して直接課金を行いません。仮想世界を公開する人に対して段階的な課金を行う予定です。サーバーリソースをあまり消費しない小規模な仮想世界は無料で公開することが可能ですが、大規模な仮想世界に対してはその規模に応じた課金が発生します。このときの支払いはメタバックスで行うようです。

この課金と、メタバックス/現金間での交換手数料、そしてメタプレイスのポータルサイトの広告手数料が運営会社の収入になると考えているようです。

一方、仮想世界を公開する人は、自分の仮想世界のユーザに対して課金を行うことができます。課金方式は様々に設定することが可能で、1回お金を払えばずっと遊べるようにもできるし、月額課金のような形式も可能です。また、RPGであればアイテム課金のようなこともできるようです。あるいは、課金ではなく寄付を募るということもできますし、コストを自己負担してユーザに無料で公開し続けることも可能です。いずれにせよ、この支払いはメタバックスで行われます。また、ゲームだけでなく、スタイルシートやモジュールに対して値段を付けることも可能です。

この仮想通貨の存在がどのような影響を及ぼすのかは、まだよくわかりません。ポジティブな面としては、多くの人に評価されるものを作った優秀なクリエーターが金銭的な対価を得ることができ、お金の流れが生まれることによって、交換手数料という形でサーバーの運営やメタプレイスの開発コストが回収されるのは面白い仕組みだと思います。また、メタバックスの枠組みによって、一般の企業がメタプレースを新しい市場とみなし、プロフェッショナルの作った仮想世界/モジュール/スタイルシートが流通する可能性も期待できると思います。

一方ネガティブな面としては、詐欺などの不正行為や、中傷合戦などのコミニケーション・トラブルを誘発する可能性、商用利用を禁じてるインターネット上の各種リソースとのアンマッチ、また著作権管理などにまつわるややこしい問題が発生するのではなどの不安も感じます。

運営側も仮想通貨に対してはやや慎重な姿勢を見せていて、現時点ではコミニティの意見を広く求めているという状況です。

関連項目: メタプレースのビジネスモデル / The Metaplace Business Model, メタバックス / Metabucks

MMORPGとしてのメタプレイス

メタプレイスの製作会社である Areae, Inc は、Ultima Online (UO) や Star Wars Galaxies (SWG) を手がけた Raph Koster 氏が設立したベンチャー企業です。Koster氏はゲーム内での人と人との交流を重視するデザイナーとして知られています。そして、メタプレイスでも Koster 氏がデザインする数千人規模の MMORPG がサポートされると発表されています。

メタプレイスは特定のジャンルに特化しない汎用の仮想世界プラットフォームですが、上述の理由によりフラグシップとなるのは、MMORPG だと考えられています。

現時点ではまだメタプレイス上の MMORPG がどのような内容のものになるのかは、あまり語られていません。ここでは、インタビューやフォーラムでの発言を元に、私の推測をいくつか述べてみます。

Areaeは、ゲーム世界の中心となるワールドを公開するようです。ユーザはこのメインワールド上でキャラクターを作りゲームをプレイすることが可能になります。

これに加え、MMORPGに必要な各種要素がスタイルシートなどの形で提供され、ユーザはメインワールドと互換性のあるワールドを自由に作ることができるようです。ユーザの作ったワールドは、ゲーム内のドアやテレポータなどによって、メインワールドとリンクされ、ゲーム内のキャラクターはワールド間を自由に行き来することができるようになります。

さらに、このワールドでは MMORPG 以外のゲームとリンクすることもでき、この場合は MMORPG 内の特定のアイテム(例えば、ゲーム機や TV)を操作することによって、キャラクターをその場に残してユーザは別のゲームをプレイすることができるようになるみたいです。

UOでは、プレイヤーは家を所有することができ、仲間と集まって大きなギルドホールを所有することができました。SWG では、仲間を集めてプレイヤーシティという形で町を作ることができるました。メタプレイスでは、仲間を集め大陸や惑星や新しいワールドが作れるようになるわけです。

ゲームバランスやアイテムの流通などの面で、まだまだ疑問点もありますが、うまく実現されればとてもエキサイティングな世界となるでしょう。多くの MORPG では、1-2ヶ月に一度パッチがあたり少しづつ世界が拡張されていきますが、メタプレイスでは毎日のように誰かがどこかで何かしら新しいものを生み出し、全体として今まで誰もみたことのないペースで、バラエティに富んだ世界が成長していくと思います。

関連項目: チーム紹介 / Team Introductions

その他いくつかの気になる点

日本語のサポート

メタプレイスは米国の会社が開発しているため、ドキュメントやインターフェイスなどは英語を中心としたものとなります。

ただし、Areaeには日本語を理解できるエンジニアの方がいて、公式フォーラムに以下ような書き込みをしてくれています。(原文ママ。翻訳ではありません)

メタプレイスが国際的に成功するとしたら、英語だけではなく日本語も勿論サポートすることが必要になると思います。日本と深い関係のある私にとってはサーバなどに国際言語入力もサポートするのが特に大切な事です。アルファでは現在のフラッシュクライエントは英語のみですが、コスター社長が私と同感ですので、ベータが開始したら日本のユーザも大歓迎しますのでよろしくお願いします。 ^^

http://forums.metaplace.com/viewtopic.php?p=4781#p4781

日本人のユーザが快適にプレイするためには、マルチバイトサポートや、フォントの扱い、ゲーム内のメッセージの翻訳など考えていかなければならないことはいくつもあります。ただ、運営側の理解は得られているようなので、あとはユーザコミニティの努力次第で、英語がわからなくてもあまり困らない環境が作れるのではないかと考えています。

現時点で公開されている Metachat で確認した限りでは、メッセージはユニコードを使っておりフォントさえインストールされていれば、どんな環境でも多国語が正しく表示され、チャット用の入力欄は IM を正しくハンドリングできています。

法律やモラルに反するコンテツ

まず Areaeの基本方針として「我々は各国の法律を遵守する」と宣言しています。

アメリカの法律ではオンラインギャンブルが全面的に禁止されているため、メタプレイスでもギャンブルは禁止です。

また、アダルトサイトではないので、セクシャルな内容についても当然規制があると思います。おそらく、YouTubeで削除されるような内容はメタプレイスでも禁止されるのではないでしょうか。

著作権について

アダルトとかギャンブルなどの問題は、グレーゾーンはあるものの、第三者にもある程度定性的な判断が可能です。一方で著作権に絡む問題に関してはずっと判断が難しくなります。

例えばゲームの場合、「特定の条件でしか出現しないキャラクター」なども考えられるため動画に比べて検証コストが高く、権利者の明示的な申告を前提とした枠組みはうまく機能しない可能性が高いでしょう。

現在日本では動画や音楽の違法コピー問題について議論が盛んになっていますが、ゲームのようなインタラクティブなメディアについての議論はあまり進んでおらず、今後新たに議論が必要となるかもしれません。

サービス開始時期について

2008年3月現在クローズドアルファテスト中です。規模を拡大したベータテストは、春の終わりごろを目標としているようです。

関連項目: アルファ・アップデート / Alpha Update

by Myfuna at 2007年12月22日 01:12 Comment(0) TrackBack(0)
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